インスリンポンプを体へつなぐために、クイックセットという消耗品を皮膚へ装着する。そして、このクイックセットはメーカーの添付文書によると48時間から72時間ごとに交換するよう書かれている。
そして、このクイックセットを装着していると、始めは平穏だった血糖値がある時から、今まで安定した血糖値がまるで嘘だったかのように、上がりだすことがある。
そして高くなった血糖値を下げるために、追加でインスリンを注入するものの、今までの様に下がらないのだ。インスリンポンプを装着してから、だいたい2日から3日ぐらいにこういう症状が、毎回ではないけれど、時々は起こる。
僕らインスリンに頼っている糖尿病患者は、人間の最強とも言える防護プロテクターである皮膚を通じてインスリンを注入している。が、しかし、この防護プロテクターは時に炎症を起こしたり、硬結(こうけつ)、つまり皮膚が硬くなってしまったりする。それゆえなのか。いつもではないものの、2、3の日すると、僕の血糖値があがりだす。
ただ、今回のは痛いインスリン(2)で紹介したような、皮膚の炎症や硬結が起こっているわけではなかった。
先週の始めくらいに起こったインスリンポンプのクイックセット装着部位での炎症は、今も腫れが引かない状態だ。先週末にドクターから抗生物質をもらって飲んだけれど、未だに赤く晴れ上がっている。やはり、インスリンポンプの注入セットは、インスリンの注射に比べ、皮膚に長く常駐するため、トラブルが起こることが多いのだろう。インスリンポンプのデメリットである。
しかし、今回は炎症などは見当たらなかったけれど、やはり何日かすると血糖値が上がりだす。しょうがないので、体につけていたインスリンポンプのクイックセットを外して、カニューレと呼ばれるインスリンを体へ入れるための皮膚に入っている管が曲がっていないかを確認する。カニューレは曲がってはいなかった。なのでカニューレのせいで血糖値が上がりだしているわけではなかった。
僕は新しい部位にインスリンポンプをつける。そうすると、今まで追加打ちしても下がらなかった血糖値が、不思議と徐々に下がっていくではないか。
古いものを外さずに使い続けていたら、血糖値は高いままだっただろう。それが新しいものに交換し、部位を変えると血糖値が下がるなんて、この人類最強の防護スーツのせいなのだろうか。
僕は新しいインスリンポンプに変えるたびに、こんなことを考えながら、クイックセットを皮膚へ装着するためのサーターと呼ばれる器具ののボタンをバチンと押している。