今やほとんど毎週のように歯医者に通う。上の歯は全てないので総入れ歯。下の歯も使えそうなのは犬歯だけ、とは歯医者の先生。最悪だと、犬歯も使えないかもしれない、と先生は思い出した様に僕に言った。
このアホンダラな僕は、昔から歯磨きの習慣が身についていなかった。だから、40代で総入れ歯になろうとしている現実に
「先生、僕の年で総入れ歯にする人は結構いるのですか?」
と質問してみた。
「40代で総入れ歯にする人はかなり少ないです」
とクレバーな先生は答えた。1型糖尿病を持っていて、歯磨きもせず、おまけに超がつくほどのヘビースモーカーのアホンダラでも、この回答にはショックは受けた。
しかし、不思議というか、面白いというか、抜歯をした後の痛みは昔に比べて少なくなった。麻酔を使って、今日は左下の奥歯2本を抜いた。昔は、その後にじんじんする痛みが数日続いたけれど、その痛みが今はほとんどない。僕の歯は、この30年でボロボロになった。
「先生、こんなに歯が悪くなったのは歯磨きをしなかったからでしょうか?」
と聞いてみた。
「原因は歯磨きや喫煙もあるけれど、1型糖尿病という病気も大きく影響していると思う」
とクレバーな先生は答えた。僕がきちんと歯磨きをするようになったのは、歯周病が始まった頃からだった。それは糖尿病を発症して10年目くらいだったような。そして20年目あたりから凄く進行したようだった。
磨けど磨けど、その甲斐も虚しく、歯を支える歯肉は年々下がり、歯周ポケットは大きくなって、歯が長く見えるようになっていった。そして、ようやく30年目という節目で僕の歯は全て無くなってしまうことになるのだろう。
クレバーな先生曰く、
「これだけ歯の状態が悪いなら、早いこと全部抜いちゃった方がいいよ」
40代で総入れ歯、それはちょっと悲しい事実だと思った。
「だって総入れ歯は、若い人ほど馴れるのが早いから」
なぜだか、この言葉に僕は妙に納得してしまった。1型糖尿病に関して言えば、子供の時に発症した人と大人の時に発症した人では病気の受け止め方がだいぶ違うらしい。大人になってから発症した人の方が病気を受け入れにくい、ということも聞いたことがある。
40代で総入れ歯になるのは悲しいことだけど、まあ、うまく付き合っていくほかないのかもしれない。体調が悪い時などに、よく頻発していた歯の浮く感じと痛みがなくなることは嬉しいけれど。
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