糖尿病のせいなのか、あるいは喫煙が原因なのだろうか。歯が痛え、と脳みそまで届きそうな痛みがあったのは糖尿病になって10年目くらいだろうか。仕事も忙しくて、歯医者に通う時間なんて見つからなかった。最初は市販の鎮痛剤でごまかしてはいたけれど、次第に痛みは治まらなくなった。
だから歯医者に通いだした。あまりの激痛に耐えかねて、歯を抜いてもらいたかった。けれども、なるべく歯は抜かずに、と歯医者は言う。最初の頃は歯を抜かずに、痛みをとる神経治療をやっていた。
歯磨きをちゃんとやりましょうね、と笑顔で言う歯科衛生士。すごく可愛い年上のお姉様。歯医者の顔など既に忘れたしまったけれども、お姉様の助言と笑顔は脳みそに焼き付いた。だから評判の良いソニックケアの歯ブラシも買って、まじめに歯磨きをした。しかし、無念にも僕の歯ぐきは痩せ衰えていき、ついに上の奥歯はなんの痛みもなく、ポロんと口の中へ落ちた。
体調が悪くなると、必ずと言っていいくらい歯が浮いた。歯がグラグラしているような感じだった。手で触ればグラつくのがわかった。だいたいの歯はこんな経過を辿りながら、抜くなり落ちるなりした。最近では、まじめに歯医者にも通って、遂に上の歯は総義歯となった。まじめな歯磨きも時既に遅く、進行していた僕の歯周病は止められなかった。
歯周組織の再生やインプラント、巷にはいろいろな歯の治療があるけれど、僕は結局抜いた。そのお陰で、たとえ体調が悪くなっても、歯に浮いた感じや痛みはない。けれども、今度は入れ歯が合ったり合わなかったりするもんだから、一抹の寂しさを入れ歯に覚える。まだ40代だと言うのに。
歯がここまで悪くなったのは、もちろん糖尿病もあるとは思うけど、タバコによるものも大きいだろう。なぜかって?今まで行った歯医者全員が、タバコを止めましょう、とヘビースモーカーの僕に言ってたことを思い出す。タバコは百害あって一利なし、わかっちゃいるけど、それでも止められないのがタバコである。だから困ったものだ。
糖尿病があって、喫煙もしているならば、第6の合併症と言われる歯周病に気をつけないと。僕みたいになるかもしれない。歯を失って初めてわかる大切さ。治療は先手必勝がモットーだけど、歯は後手後手になったことが悔やまれる。もっと大切にしていれば良かった、とアホンダラな僕は振り返る。治療が遅くなればなる程、いやでも歯医者に行く回数は増えて、おまけに財布も軽くなっていく。あー、過去の虫歯のなかった自分に戻りたい・・
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